自閉症スペクトラム障がい(アスペルガー)の人が手話を使うことの有効性
2018/09/19
(この記事は2013年11月26日に書いたものです。)
アスペルガー症候群の綾屋紗月さんのことを昨日の記事で書きました。
綾屋さんは会話する際、手話を補助的に使用しています。
今日はの記事では、手話が自閉症スペクトラム(発達障がい)の人に有効なことなのかを考えてみたいと思いました。
「話せない感覚」と手話
綾屋さんは、子供の頃から、「話せない感覚」というのを持っており、「意味のまとめあげ」と「行動のまとめあげ」がスムーズでないことでそのような感覚がおきているのだそうです。
NNNドキュメントを見て、綾屋さんのことを知った少し後に、私の娘、さやが手話に触れる機会がありました。
社会福祉協議会のイベントがあり、ポップコーンやフランクフルトの屋台が出ていて、輪なげやスーパーボールすくいなど、子供が楽しめるような内容のイベントだったので、他に予定のなかった私とさやは行ってみることにしました。(こういう地域のイベントはお金がかからない休日を過ごすのにもってこいですね)
社会福祉協議会の建物の中では、スタンプラリーが行われていて、各部屋へ行って点字や手話などの体験をするとスタンプが押してもらえます。
中が混雑していてスタンプラリーはやめておこうかとも思ったのですが、綾屋さんが手話を使っていたことが頭をよぎり、手話だけでも参加して、さやの反応を見てみようと思いました。
ボランティアの方たちが、対面で「おはよう」や「ありがとう」などの挨拶の手話と、自分の名前の指文字について教えてくれましたが、さやは人見知りなところがあるので、教えてくれる人より私の方を見ながら自信なさそうに手話をしていました。
恥ずかしがっていて、伝える気持ちの薄いさやには、手話は特にアシストにはならないのかな、とその時は思い、さやの反応が見られただけでもまあいっかという感じで帰りました。
ところが、家に帰ると、さやは習った手話を何度も使って再現し、得意そうにパパにも見せていました。
NHKの手話ニュースなども見て、いろいろ真似をしたり、手話に興味を持ったようです。
そこで手話の本を1冊買ってあげようと思い、書店であれこれ本を物色しました。
手話の本を買ってみた
いろんな本があったのですが、子供向けの手話の本なんて1冊もなく、仕方ないのでDVD付きで指文字がはっきりと載っている本にしました。
DVDつき ゼロからわかる手話入門―手の動きがすぐにマネできる「ミラー撮影」採用
DVDつきの手話の本、他にもいろいろあったのですが、決め手は「ミラー撮影」です。
テレビ画面を見たとき、相手は本来、反対に見えるので、自分の手話とすぐに対応させて覚えるにはミラー撮影の方が便利ですよね。
もちろん、ミラーになっていない方の映像もあるので、相手の手話を読み取る練習にも使えます。
その次に決め手となったのは前述にもある指文字。
指文字は50音を片手で表すことができるもので、音声言語に慣れている聴者の入門としては、一番親しみやすかったりします。
いろいろな手話の本の指文字の一覧を見ましたが、絵で表しているものより、手の形が写真になっているものの方が断然わかりやすいですね。
この本を買って、しばらくは自分で指文字の練習やDVDを見たりして楽しんでいたのですが、そのうち飽きて、挨拶の手話や自分の名前の指文字などをやるだけになってしまいました。
まあ、6歳の子供ですからね。
子どもが手話に興味を持つには?
「発達障害当事者研究」の本に、綾屋紗月さんが幼児期に出会った耳の聴こえない子との出会いと、小学生になって自分で手話の本から指文字を覚えたくだりがありました。
話す相手がいなければ、言語というのは上達しないので、子どもの頃の綾屋さんは手話の習得には至らなかったものの、大学生になって手話サークルに入ったところではじめて本腰を入れて手話の勉強をするようになったそうです。
さやも、手話が本当に必要だと思えばこの先、自分でどんどん吸収するだろうし、本が家にあって、いつでも手話に親しめる環境があるというだけで、今はよいのだと思いました。
と、思っていた矢先のこと。
昨日、テレビで徳洲会グループの公職選挙法違反事件のニュースを目にして、さやは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の徳田虎雄氏について興味深深で、「しゃべれないのに、どうやって伝えるの?」とパパに詳細を聞いていました。
公職選挙法違反のことよりも、動けないし話せない人がどうやって人に意思を伝達するのか、ということが疑問のようで、目で文字盤を追う方法についてのパパの説明を聞いた後、手話の本を持ってきて、また指文字の練習を始めました。
そして、「私、耳の聞こえない人の役に立ちたいの」と言ったのです。
6歳の子が、そのようなことを言うと、普通の親としては泣ける話なのかもしれませんが、普段、悪魔的なことを平気で言うようなところもある子なので、少し拍子抜けしました。
「耳の聞こえない人となら仲良くなれそうとか思ったの?」と私が聞くと、「そうなの!」とさやは明るく答えて指文字練習に没頭しました。
音声情報を読み取ることへの自信のなさ
綾屋さんは著書で、「手話のほうが音声よりわかりやすいということはない」と断言していますが、「聞こえてはいるが、意味の把握に自信がない」という状況が多々あり、そんなときに音声と同時に手話という視覚情報があると、意味を正確に絞り込むことができて安心するのだそうです。
私の娘、さやが手話の使い手になるかどうかはこの先わからない所ですが、どんな方法にせよ、安心して人と会話をする方法を見に付けていってくれたらと思います。
ちなみに、私が住んでいるところや近隣の市の手話サークルを調べましたが、夜からの活動が多く、子供には向かない時間帯なので、今のところ参加できそうにはありません。
話し相手がいた方が、手話も上達しそうなのに・・・。残念。
関連記事(1):発達障害当事者が離婚をするときの消耗感。 綾屋紗月著「前略、離婚を決めました」の感想
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