山口かこ著「母親やめてもいいですか?」という本の感想
(この記事は2014年1月3日に書いたものです。)
療育センターの親の控え室の本棚に山口かこ著「母親やめてもいいですか?」というショッキングなタイトルの本が追加されていました。
会費で購入されるようなタイプの本ではないので、親の会の誰かが個人的に買った本を、いらないからと寄付したのかもしれません。
批判多き本
2013年3月に出された本なので、わりと新しい本です。
お正月の時間のあるときにでも読もうかな、と思って借りていたのですが、昨日、読み終えました。
200ページ位の漫画と文章を交えた本なので、量的にはあっというまに読み終わります。
読み終わって、「この本、あまり評判はよくないだろうな」と思ってアマゾンのレビューを見てみたら、50件以上の凄まじい件数のレビューがついていて、ざざっと見る限り、おおかた、著者である山口さんの批判でした。(擁護する意見も少数ですがありました)
広汎性発達障害のお子さんと著者の転落人生
著者の山口さんは、不妊治療、流産を乗り越えて、ようやく授かったお子さんが広汎性発達障害でした。
山口さんは、この本の前半では、育てにくいわが子の育児にクタクタになりながらも、お子さんの様子をよく観察し、試行錯誤しながら対応していく真剣な様子が描かれています。
お子さんのことを医師から「広汎性発達障害」と診断を受けた後、戸惑いつつも障害を受け入れ、療育にもちゃんと取り組んでいます。
それが・・・後半にガタガタと著者が転落していく展開へと続く様は、NHKの番組から急に民放の昼ドラにチャンネルを切り替えたようなギャップがあります。
療育に行き詰まりを感じ、お子さんの将来を悲観し、山口さんはやがてうつ状態になります。
そして山口さんはネットのチャットにはまり、夫ではない男性と浮気し、宗教にもはまり、現実逃避を重ね、その果てに離婚に至ります。
お子さんの親権は山口さんの元夫が持つこととなります。
この本のあとがきで山口さんは、「いつか発達障害の人とご家族のために役立つ本を書きたいと考えていた」というようなことを書いています。
この本が発達障害の人とその家族にとって役立つ本とはとうてい思えないわけですが、ショッキングなタイトルと内容ゆえに「売れる」本であったことは間違いなく、アマゾンの「親子関係」というジャンルで10位に入っていて、出版社であるかもがわ出版にとっては大変、役に立つ本となったと思います。
そして、「愚かな人を見つけて思いきり叩きたい」という人のためのサンドバッグ的な役割も果たしたと思います。
「普通の子だったら」と思ってしまう弱い心
人の精神的な強さというのはそれぞれなのですが、弱い人というのもいて、そういう人が発達障害の子どもを育てているケースもきっとあると思います。
私も、自分自身に弱さを認めることはあります。
山口さんが、子供を夫に引き渡したことを実母に批判されて、「普通の子だったら引き取っていた」というような発言をする場面もありました。
私も、アスペルガーの娘のことを「普通の子だったら」と心の中で思ったことがあります。
娘の癇癪があまりにも酷いときなどに「普通の子だったら」と、心では思うことがあるのですが、子供に向けて言うこともないし、夫や友達にも言うことはありません。
「子供と一緒に命を絶ってしまいたい」と思うこともあり、頭の中で、「子供と一緒に命を絶ってしまいたい」と叫んでいる自分がいる反面、実行には移さないとわかっている自分もいます。
私は、現在も過去にも「うつ状態」になったことは一度もないのですが、「自分との対話」ができているうちは、うつ状態にはならない気がしています。(一般論でなく、私に限ってのことですが)
衝動的に、「子供と一緒に命を絶ってしまいたい」と思う自分と、それを冷静に見ている自分。
このバランスが、私の精神を保つためには大切だったりします。
娘とよく見ていたドラマ「マルモのおきて」で、「好きでも嫌いでも家族」というセリフがあって、このセリフはずっと私の中に残っています。
家族は一緒に暮らしていると、いろいろな感情が起こりますが、どんな感情を抱いても、家族は家族なのです。
山口さんのお子さんは母親に見捨てられたような結果となり、可愛そうではありますが、発達障害ということを除けば数ある離婚話の一つなので、親の離婚を乗り越えて健やかに成長してくれることを願うばかりです。
山口かこさんはフリーライターをされているそうで、ブログなどがあるか探したのですが、見つかりませんでした。
お元気でいらっしゃるのでしょうか。
ーーー追記ーーー
2018年10月に山口かこ著「母親やめてもいいですか?」を調べたところ、kindle化されてお求めやすくなっており、レビューも150件以上と増えているようです。
私が読んだ2013年の頃より、肯定的なレビューが増えてきているように思います。