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NHK Eテレ バリバラ~障害者情報バラエティー~「コミュニケーション」を見て

   

綾屋紗月

(この記事は2014年2月7日に書いたものです。)

 

 

以前、このブログでも紹介した綾屋紗月さんが出るということで、NHK Eテレで放映された「バリバラ~障害者情報バラエティー~”コミュニケーション”」を見ました。

 

綾屋紗月さんは発達障害当事者として出演していました。

 

綾屋さんは、「普通にコミュニケーションとれそうですよね」という司会の方が言うと、「テンションが高い雰囲気は好きだけれど、無理やり自分がテンションを上げると呼吸困難になったり、動悸がしたりして、後で具合が悪くなってしまうので、ちょっとノレてない感じの表現になってしまう」と言っていました。

 

発達障害の当事者が、お互いに分析し合う会

 

綾屋さんは、「D会(Deep Dangerous Deluxe)」という、発達障害、精神障害、身体障害など様々なメンバーで構成される集まりに所属しています。

参加メンバーに共通しているのは、「コミュニケーションが苦手」ということです。

 

D会の皆さんは、会話すると何故か相手を怒らせてしまったり、周囲からのけもの扱いされることがしばしばあるということです。
そんなD会では、メンバーの実際に経験したコミュニケーショントラブルを一つずつ分析するのだそうです。

 

番組でD会を取材したとき、ちょうど扱っていたテーマが、「ことこさん」という発達障害者の方が、話題を突然変えることによって、会話が通じなくなってしまうということでした。

 

ことこさんは、記憶というのは点となって細かく分散しているので、どこでつながっているのかわからないということでした。

 

それに対して綾屋さんの意見は、記憶を時間軸にそって並べていく作業の必要性について述べていました。

 

D会での事例分析は、なかなか有意義な感じだったので、私は見ていて感心しました。

 

ケンカになることもあるけれど

 

D会ではケンカのようになることもしばしばあり、「わからないからムカつく、わかるからこそムカつく」といった様々な感情を抱きながら分析が行われているそうですが、話しているうちにだんだん、「仲間だから仕方ないか」という風に思えてくるのだそうです。

 

他にも、「みつるさん」という方が、突然関係のない話をし出したときのことが紹介されていましたが、みつるさんが芸術関係の知識が豊富で、突然、話が芸術方面に飛んでしまうことがあるというパターンをまわりの人が理解することで、コミュニケーション障害ではなくなる、という話を綾屋さんがしていました。

 

話が過剰になってしまう「トウコさん」という発達障害の方は、相手が話し出す前に話してしまったり、機関銃のように話し続ける方ですが、何故、そのようになってしまうのかというと、トウコさんは記憶力が抜群で、過去の出来事を細かく覚えていすぎる傾向があるからなのだそうです。

 

相手の発言をきっかけに、次々に情報が引き出され、話したいことが溢れてきてしまうということでした。

 

主催者の綾屋さんの考える「コミュニケーション」

 

D会のメンバーで、最後に綾屋さんの特性について紹介していましたが、綾屋さんは周囲のノイズを人よりも多く拾ってしまうので、耳鳴りにのような状態に陥り、自分の声が聞き取りにくいのだそうです。

 

そこで、綾屋さんが、周囲がうるさいときなどに、自分が大きな声を出さなくてすむように手話を使って会話するということでした。

 

綾屋さんはまとめとして、「コミュニケーションというのは、人と人との間に起きていることで、コミュニケーション障害というときも、人との間でのすれ違いなので、どちらか一人に原因がありわけではなく、そこに何が起きているのかということを、具体的に構造を見ていって、だんだんお互いをわかっていけるような関係を築きたい」と述べています。

 

「コミュニケーション障害」といったときに、これほどまでに様々なケースがあり、そのケースごとの分析が本当に見事だな、と思いました。

 

発達障害と診断されていない人の中にも、すぐに話が別の方向に飛んでしまう人や、過剰に話しすぎてしまう人って、私達の身の回りにもいますね。

 

D会は、発達障害の人をメインとしていますが、内容的に、発達障害でない人にも有益な情報なのではないでしょうか。

 

 

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