2歳で重度の自閉症と診断された女の子がPCやi padで自分の意思を伝えている動画を見て。
(この記事は2014年2月11日に書いたものです。)
このブログでも少し前に自閉症のカーリーという女の子について紹介しました。
前回紹介したときには、カーリーの目を通して自閉症の世界を知るような動画でしたが、今回は、カーリーがパソコンのキーボードをタイプすることで、自分の意思を伝えている動画を紹介します。
(カーリーの最近の状況や詳しい生い立ちはこの動画ではない所で確認しました)
カーリーの幼少期
カーリーには双子の妹がいましたが、両親はカーリーと妹との間に発達の違いを感じていました。
カーリーは2歳で重度の自閉症と診断されました。
この時、医師からは、話すことはできず、知的発達は望めないだろうと言われたそうです。
この動画では、カーリーが幼少期に集中的なABA(応用行動分析)によるセッションを受けていることがわかります。
ABAの介入があっても、カーリーは自分の口から言葉を発し、人と話すことはできませんでした。
突然の奇跡
カーリーが10歳のとき、セラピストとのセッション中、驚くべきことが起こります。
カーリーは自分の体に異変を感じ、それを伝えるためにパソコンのキーボードを取り出し、”Help teeth hurt.”(歯が痛いから助けて)と打つのです。
この出来事によって、その後のカーリーの人生が大きく変わりました。
それまで、家族はカーリーが何を思い、考えているかを知ることもできませんでしたが、カーリーがパソコンのキーボードを打つことで、家族とコミュニケーションがとれるようになり、やがてFacebookやTwitter、ブログなどでも世界中の人たちと関わるようになったのです。
そして、カーリーは普通の学校に通い、大学も目指すようになります。
ABA(応用行動分)の効果?
カーリーは未だに話すことはできず、体の細部の運動機能が上手く働かず、ぎこちない動きをし、ロッキング(体を前後に繰り返し動かす様子)をしたりしています。
パソコンで自分の意思を伝えられている点で、重度の自閉症ではないと思われる方もいるかもしれませんが、カーリーの動作や話ができない様子などを見る限りでは、高機能自閉症のような分類には入らないと思います。
カーリーが知的発達をとげたのは、ABAの介入によるものだとカーリーの両親は確信しています。
それがABAによるものかどうかはさておき、言葉の話せない、見るからに重度の自閉症の人が、道具を使用することで、自分を意思を詳細に伝えられるようになったということは、多くの人に希望を与えることではないでしょうか。
道具を使って意思を伝える
カーリーの他にもパソコンや筆談で意思を伝えられるようになった自閉症の人の話は聞いたことがあります。
PECSのような絵カードで自分の意思を伝えるのは限りがありますが、文字と文法を習得すると、細部まで自分の考えを伝えることができ、自閉症の人の世界がはるかに広がることと思います。
この動画ではノートパソコンを使用していますが、現在、カーリーはi padを好んで使用しているそうです。
i padは自閉症だけでなく、集中が途切れやすいADHDの人や、LD(学習障害)の人の学習ツールとしても注目されていますね。
私は今、アスペルガー症候群(現在は自閉症スペクトラム障がいに含まれています)の娘の学習ツールとして、i padを検討しているところなので、i padが発達障害の人にもたらす大きな可能性について考えているところです。
いろいろなタブレット端末がありますが、操作性を考えると、i padが一番よいのかなぁと思っています。
i padの療育的可能性
ABAなど、療育ツールとしてのi padアプリは、日本語のものは海外のものと比べて遅れがあるような気がします。
i padにしろAndroidにしろ、日本で療育のためのアプリがどんどん開発されたらうれしいです。
「日本でABAはお金のある人しかできない」、というような意見をネット上で見たことがあります。
体系化されたABAを実現できるアプリがあれば、i padの価格が5万円~8万円くらい(スペックによって違います)で手に入るので、10万円以内でABAで文字や概念を獲得する取り組みができるように思います。
一つ一つの教材を手作りしたり、購入したりするのを考えると、ABAが面倒になってしまう人もいるのではないでしょうか。
カードのマッチングなども、i padで専用のアプリがあれば、自分でカードを用意しなくてもよいですね。
発語のない子や言葉に遅れがある子のためのアプリを、NPO法人チャイルド・ケアリング・アソシエーションという所で開発したそうですが、使いやすさや内容の充実度が気になります。
チャイルド・ケアリング・アソシエーションが開発したアプリは以下の3つ。
・発語のない子や遅い子、構音障害、失語症などを対象とした「すらすらことば」。
・「すらすらことば」の次の段階で、「模倣相互作用」による言語獲得を促進する「どんどんはなそう」。
・行動の追順できず、注意力や集中力の持続が困難で、聴覚記憶が弱い人を対象とした「ぐんぐんきおく」。
それぞれの価格は3,000円だそうですが、そんなに高価な値段設定ではなさそうですね。
それにしても、カーリーのように、話せなくても内面に言葉を貯め込んでいる自閉症のお子さんで誰にもそれを気づかれずにいるケース、けっこうありそうな気がしませんか。
カーリーのお父さんは、「あきらめない」という言葉を他の動画でも何回も使用していましたが、会話のできないお子さんで、年齢が上になってくるほど親が「あきらめ」の気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
「声に出して言えなくても、内面には言葉があるかもしれない」という希望は、発語のない自閉症児の親御さんの励みにはならないでしょうか。
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