「子ども虐待という第四の発達障害」を読んで。虐待は脳を萎縮させる。
2019/01/02
(この記事は2014年1月28日に書いたものです。)
テレビドラマ「明日、ママがいない」の賛否が問われている中、最近、児童虐待の話題をメディアで見る機会が増えています。
杉山登志郎先生の本は他の記事でも紹介したことがありますが、 「子ども虐待という第四の発達障害」は、虐待によって子どもの脳の発達に障害が生じるという医学的な側面から虐待を論じています。
虐待と発達障害が結びついている話でよくあるのは、生まれつき発達障害を持っている子に育て難さがあり、親がそれに耐えられなくて虐待に及ぶ、というものが多いかと思います。
虐待によって脳が萎縮し、後天的に発達障害になる子がいるというのは、とてもショッキングな話ですね。
虐待によって脳はどのように変化するのか?
虐待によって脳がどのように変化するのかを以下にまとめます。
・前頭前野及び側頭葉の体積が減少し、なおかつ、早くから虐待を受けた子の方が大脳が小さく、虐待を受けている期間が長期化するほど脳が小さくなる。
・脳梁の体積が、虐待された子は健常な子に比べて小さい。
脳梁の体積と解離症状は負の相関関係があり、脳梁の体積が小さいと、右脳と左脳の共同作業が難しく、右脳と左脳がそれぞれ別々に働く傾向が強くなり、解離症状が強くなる。
・子どもの頃に虐待を受け、成人になった人の海馬は、健常の人と比較して5~18%小さい。
解離やPTSDの重篤度と体積の小ささとは相関が認められ、体積が小さいほど重症で、さらに、海馬が左右共にダメージを受けている。
・扁桃体が健常の人に比べて8~23%、体積が減少している。扁桃体の小ささは、対人関係や情緒面の不安定さとの関連がある。
・記憶課題で、健常な人は左の海馬の血流が増加したのに対して、虐待を受けたことのあるPTSDの人は、左の海馬の血流が低下する。
先天的なADHDとの違い
虐待によって、ADHDのような症状を起こしている子がいるわけですが、先天的なADHDと何が違うのかを以下にまとめます。
・先天的ADHDは、多動が比較的一日中であるのに対し、虐待によるADHD様は、多動にムラがあり、夕方からハイテンションになることが多い。
・対人関係の持ち方が、先天的ADHDは単純で素直であるが、虐待によるADHD様は、逆説的で複雑である。
・投薬について、先天的ADHDは中枢刺激剤(コンサータ等)が有効であるが、虐待によるADHD様は中枢刺激剤が効かず、抗うつ薬と抗精神病薬が効くことが多い。
・先天的ADHDは反抗挑戦性障害や非行へ移行するケースが比較的少ないのに対し、虐待によるADHD様は非常に多くみられる。
・虐待によるADHD様は解離症状があるが、先天的ADHDの場合は解離症状がない。
解離症状がある時点で、ADHDとは診断されなくなる。
先天的にADHDのある子よりも症状が重篤?
「子ども虐待という第四の発達障害 」を読むかぎりでは、先天的にADHDのある子よりも症状が重篤であるように見受けられます。
せっかく障害がない子として生まれてきたのに、後天的に脳にダメージを与えられてしまうなんて。
子どもに虐待をする人も、負の連鎖で親から虐待された経験がある人が多いようですが、頭の中では、虐待がいけないことぐらい、わかっているんでしょうね。
「虐待で子どもの脳が萎縮する」ということをAC(公共広告機構)などでもっと全面的に広めると、児童虐待の発生率は減少しないでしょうか。
「ストップ!虐待」といったポスターを見かけますが、そのポスターで虐待がストップするようなことはないだろうな、とよく思います。
何で虐待がいけないのかと問うと、一般的な答えとしては、「子どもがかわいそうだから」となるのでしょうが、「かわいそう」という漠然としたものでは、虐待の抑止にはつながらない気がします。
「子どもの脳が萎縮するので、虐待はやめましょう。」
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