容疑者がアスペルガー症候群だったアメリカの小学校での銃乱射事件(アダム・ランザ)
(この記事は2014年1月4日に書いたものです。)
アメリカコネティカット州ニュータウンの小学校で、2012年12月に起きた銃乱射事件について、同州警察が2013年12月27日、数千ページにわたる最終報告書を公表しました。
事件の概要
その内容は、アダム・ランザ容疑者(当時20歳)が抱えていた悩みや、家族との関係など明らかになっています。
↑容疑者の自宅前に張られた規制線
ランザ容疑者は小学校で銃を乱射し、児童20人、職員ら6人の命を奪いました。
自宅で母親のナンシーさんを射殺し、最後に自分の頭を撃って命を絶ちました。
報告書によると、母親のナンシーさんは事件の前日、友人との会話で息子の「障害」などについて語っています。
ランザ容疑者はアスペルガー症候群と診断されていました。
検察は報告書の中で、ランザ容疑者は精神的な問題を抱えていて、日常生活や人間関係に支障があったと指摘しています。
母親と同じ家に住みながら、電子メールで会話していたことなどを明らかにしました。
特殊な親子関係
ランザ容疑者を診察した専門家たちは、事件を予期できなかったとして、精神的な問題と事件との因果関係は不明であるとの見方を示しました。
ランザ容疑者を教えたことのある教師が語ったことによると、ランザ容疑者はかつて、短い作文を書くという課題で、戦争や破壊をテーマに10ページの長文をつづったそうです。あまりにも生々しい内容だったために、クラスで紹介できなかったといいます。
母親のナンシーさんと離婚したランザ容疑者の父親は、年に6~8回ランザ容疑者にメールを送っていたけれど、約3年前から全く返信が来なくなったと話しています。
ランザ容疑者は、母親が本人の意思に反して精神医療施設に入院させようとしていたことに対し、「強い怒り」を抱いていたようです。
また、母親がかつて、乱射現場のサンディフック小学校に併設される幼稚園部でボランティアをしていたことから、「母親は自分よりも子供たちの方を愛している」とランザ容疑者が、思い込んでしまった可能性があるとしています。
アスペルガー症候群が事件の直接的原因なのか?
アメリカのメディアでは、「アスペルガー症候群が、犯罪に直結するような攻撃的性格を関連付ける医学的証拠は存在しない」と度々報道しているそうです。
私が思うことは、アスペルガー症候群ということが攻撃性という論点で語られるのではなく、容疑者が世間や家族と距離を置くようになった原因がアスペルガー症候群にあるのか、ということです。
母親と同じ家に住みながら、電子メールで会話するというのはとても寂しいことです。
母親がボランティアをしていた学校を銃撃するということは、母親に対して強く思うことがあるからなのでしょう。
アスペルガーゆえに世間と関わるのが難しかったとしても、家族だけでも心の結びつきがあれば、容疑者が暴走の道を選ぶことはなかったような気がします。
容疑者の母親も亡くなってしまったので、母親との関係がいつから、何を背景に壊れていったのかを詳しく知ることができないのが残念です。
それがわかれば、思春期以降のアスペルガーの子供と親の望ましい関わり方のヒントになったのではないでしょうか。