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(東大自閉症研究の論文)自閉症の対人コミュニケーションがオキシトシン点鼻薬で改善

   

自閉症スペクトラム障害

(この記事は2014年1月5日に書いたものです。)

 

東京大学は、自閉症スペクトラム障害の患者が、ホルモンの1種「オキシトシン」をスプレーで鼻から吸入することで、元来、低下していた内側前頭前野の活動が活性化され、それとともに対人コミュニケーション障害が改善されることを確認したと2013年12月19日に発表しました。

 

自閉症は表情や声色を重視しない

対人コミュニケーション障害が改善
↑表情・声色を活用した他者理解の回数

 

この研究結果は、東大大学院医学系研究科 精神医学分野の山末英典 准教授らによるもので、その詳細は米国医師会の精神医学に関する雑誌「JAMA Psychiatry」に掲載されました。

 

東大研究グループでは、これまでの研究から、言葉の内容より表情や声色を重視して相手の友好性を判断する頻度が、自閉症スペクトラム障害群では健常対照群に比較して有意に少ないことを実証し、この特徴には内側前頭前野の活動低下が関係していることを報告していました。

 

「オキシトシン」の点鼻スプレー投与で改善できるか

 

今回の研究では、こうした自閉症の特徴が、脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や乳腺の筋線維を収縮させる作用を介した乳汁分泌促進作用などをもたらすことで知られている「オキシトシン」の点鼻スプレー投与で改善できるかどうかの検証が行われました。

 

具体的には、東京大学医学部附属病院において、20代から40代の40名の自閉症スペクトラム障害の男性を対象とし、二重盲検などより客観性の高い方法で医師主導の臨床試験を実施しました。

その結果、オキシトシン投与が自閉症スペクトラム障害において元来低下していた脳活動を有意に上昇させ、それと共に対人コミュニケーションの障害が有意に改善されることを確認したといいます。

 

オキシトシン点鼻スプレーを1回投与した場合であっても、健常群で観察されるような表情や声色を活用しながら相手の友好性を判断するような行動が増え、それとともに内側前頭前野の活動が回復することが示され、それら行動上の改善度と脳活動上の改善度が関与し合っていることが認められたとのことです。

 

そして同研究グループでは、オキシトシンによって脳の活動に変化を与え、自閉症スペクトラム障害を治療できる可能性が示された結果が得られたという発言をしています。

 

連日投与など、様々な条件での検証が必要

 

研究グループでは現在、今回の知見に基づき、オキシトシンの点鼻スプレー製剤を活用した、自閉症スペクトラム障害における対人コミュニケーション障害の治療法開発を進めているとしています。

 

ただし、治療薬実現には、今回の1回投与による効果が、連日に投与し続けた場合にも認められ、日常生活においても役立つのかを検証する必要があり、この検証のために、東大病院にて自閉症スペクトラム障害の患者20名の協力を得る形で、オキシトシンの点鼻スプレー6週間投与の効果を検証する臨床試験を行っているといいます。

 

今後は、この試験データを解析し、有効性と安全性の検証を行い、日常の診療で使用するためにはさらに、何人に臨床試験に参加してもらえば良いかといったことなどを算出していく予定で、これまで、日常生活においての対人コミュニケーション障害の重症度が、時間的に変化していく様子を客観的に評価できるような方法が存在しなかったことから、そうした評価方法の確立にも取り組む予定としています。

 

また、今回対象としなかった女性や幼児の患者についても、オキシトシンの有効性や安全性の検証を行う必要があるため、そうした検証も行う計画もあるとしています。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害における対人コミュニケーション障害の改善結果が出たとはいえ、オキシトシンの点鼻スプレー製剤が医療現場で使用されるようになるのは、もう少し先のような気がしますね。

いくつかクリアしなければならない研究過程もあるし(作用時間、女性と子供)、厚生労働省による新薬承認のスピードも諸外国に比べて遅いし、ずっと先の話のようですが、いつか、自閉症スペクトラム障害の人の症状が少しでも改善するならば、将来の希望となる研究ですね。

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