虐待を防ぐ。「全国で相次ぐ“消えた赤ちゃん” その真相を追う」NHKあさイチの特集を見て。
2019/04/24
(この記事は2014年3月3日に書いたものです。)
「乳幼児健診」を受診せず、所在をつかむこともできない乳幼児がたくさんいるそうです。
昨年12月の新聞社の調査では、全国で4176人の乳幼児の所在がつかめていません。
中でも市区町村で全国最多だった横浜市が先月行った調査では、608人の所在不明乳幼児がいることが確認されました。
居住実態のない子の虐待リスク
昨年、厚生労働省は、乳幼児健診が未受診で、居住実態のない子供は虐待の発生リスクが高いことを指摘しています。全国の自治体に確認を急ぐように通達を出したそうです。
厚生労働省が事態を重く見た理由として、以下の事件が背景にあるようです。
・愛知県豊橋市で両親の育児放棄で4歳女児が衰弱死した事件。
・5歳の男児が餓死した奈良県桜井市の事件。
・大阪市のマンションで餓死した3歳女児と1歳男児の事件
これらの亡くなった子供達に共通しているのが、皆、乳幼児健診を受けていなかったということです。
虐待事件の教訓から、各地の自治体は乳幼児健診未受診者の追跡調査を始めています。
愛知県豊橋市の事件とその後の取り組み
番組が取材するにあたって定義した「所在不明乳幼児」とは、乳幼児健診(一般的には3~4ヵ月健診・1歳6ヵ月健診・3歳児健診)を受診しておらず、住民票の住所に居住しているか確認できない乳幼児のことだそうです。
今回、番組の取材対象となったのは愛知県豊橋市で、2012年9月に育児放棄で4歳の女児が亡くなった事件を受けて、乳幼児健診を受診していない子の追跡調査を特に強化しています。
豊橋市の育児放棄事件では、乳幼児健診を一度も受診していないことから、保健師が家を訪問していました。生活の気配はありませんでしたが、住民登録のある住所に案内を送り続けたそうです。
しかし、一家は別の家で生活しており、女児はそこで虐待を受けていました。
豊橋市保健所の子ども保健課課長の鈴木美幸さんは、「もう一歩の踏み込みが、個人の保健師としてではなく、組織として足りなかった」とコメントしています。
豊橋市は、悲劇を繰り返してはならないとして、「虐待ハイリスク担当」の保健師を新たなポジションとして設置し、乳幼児健診未受診者の追跡強化に取り組んでいます。
豊橋市は、組織自体の改革もしました。
虐待死事件の女児の父親は児童手当を申請するため、市の子育て支援課を訪れて、新たな連絡先を伝えていたそうです。
ところが、その情報は保健師グループには伝わっておらず、虐待の発見には至りませんでした。
そこで、豊橋市は、縦割りによる弊害を打破するために、子どもが関係する情報の一元化を進めています。
しかし、市の情報共有で居場所がつかめたとしても、実際に子どもの姿を確認するまでには、高い壁があるそうです。
親が共働きで不在がちだったり、門前払いや居留守を使われてしまうことも多いのだそうです。
所在不明乳幼児をゼロにした自治体
番組では、奈良県宇陀市が所在不明乳幼児をゼロにした取り組みを紹介しました。
宇陀市では、生後2ヶ月のときに予防接種の説明会を行っており、その説明会では「ウッピー商品券」という市内で1万円分の買い物ができる券を配布しています。
予防接種の説明会に来なかった人を、商品券を携えて訪問するようにしたところ、保健師との面会率は100%になり、親子の状況把握を可能にし、保健師との円滑なコミュケーションがとれるようになったのだそうです。
「顔の見える関係」を出産直後から作ることで、親子の孤立を防止する取り組みとなっています。
この問題について、スタジオでは、虐待の問題に詳しい山梨県立大学人間福祉学部教授の西澤哲先生を専門化として招きました。
西澤哲先生は、健診のようなものは、「指導されてしまう」という気持ちになり、敷居の高さを感じるものなので、宇陀市の「ウッピー商品券」のようなインセンティブのある取り組みは非常に効果的であると述べています。
「乳幼児健診に来ない家庭」は、孤立した母親の虐待リスクという側面もありますが、子どもの発達が遅かったりして、健診で否定的なことを言われるのでは、と健診を躊躇してしまうケースもあり、番組ではそのような家庭も紹介しています。
母親が子どもの言葉の遅れを感じていて、ナイーブな気持ちになっていた人のことなど、また次の記事で書きたいと思います。
私自身も、娘の発達が遅れていて、3歳児健診までは、「行きたくない」気持ちを抑えて健診に臨んでいました。
そのへんのところを、次の記事で掘り下げようと思います。
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