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自閉症の子をABAで遠隔操作 ~幼稚園転園の悲しみ(3)

      2018/12/28

ABA 療育

前の記事にも書きましたが、K幼稚園不登園の後、年中から入ったY幼稚園で、娘のさやは職員室で過ごしてばかりいました。
今日の記事は、いかにしてさやの職員室生活を終わらせることができたか、というテーマで書きたいと思います。

 

ABAを行いたいけれど、療育センターとは対立したくない

 

奥田健次先生の「メリットの法則」を読んで、職員室にばかり行っている状態はよろしくないと思ったわけですが、療育センター、幼稚園ともに「職員室にいる時間はさやにとって必要な時間」と考えていました。

 

さやが通っている療育センターは、応用行動分析療法(ABA)の考え方にどちらかというと否定的であり、TEACCHのような「構造化」の考え方のみに偏っていています。

 

「集団で取り組めないときは別室で」というのがTEACCHの考えによるものかはわかりませんが、3年以上療育を受けてきて、療育内容にABAのようなことは一切ありませんでした。

 

そのため、療育センターの先生が定期的に訪問し、指導を受けているY幼稚園で、ABAを実践することは不可能に近いことでした。

 

TEACCHはそれ自体、効果的な方法ではあると思いますが、万能ではないので、ABAと併用すべきだと私は思っています。

 

ずっと以前にトークンエコノミーを行った記憶

 

幼稚園よりもさらに過去に遡った記憶ですが、療育センターに入って半年ほどしたころのことです。

 

さやは療育センターに行くのを渋り、療育センターの建物に入るのも大変だった時期がありました。

 

このときも、さやには別室が用意されて、「入れないならママと二人でこっちの部屋で過ごしてね」、という対応がとられました。

 

別室で過ごすことで改善することなく1ヶ月が過ぎたとき、私の中で、「何かが違う」と思いはじめました。

 

そう思ったときに、ちょうどABAの基本書のような本を読み終え、「トークンエコノミー」という方法があることを知り、この方法を実践してみたくなったので

 

トークンとは、目標としている行動をしたときに、ご褒美として与えられるもので、シールやスタンプを集めてプレゼントなどがもらえるお店のポイントカードに似ています。

 

トークンエコノミーを実践したくても、療育センターでは、センターの方針と違う方法は受け入れない雰囲気があったので、先生には内緒でやってみることにしました。

 

当時はまだ3歳だったので、文字も読めず、細かい説明をして理解できる感じではなかったので、トークンは100円ショップで売っている人形の洋服を写真に撮り、ポケットに入るサイズに小さくプリントしました。

 

そして療育センターの建物の前についたときにその写真を見せて、「○○(療育センター)に入ったらおうちでこれあげるよ」と言いました。

 

建物に入ると今度はクラスに入らず別室に行こうとするので、そのときも、先生に見つからないように素早く人形の服の写真を見せ、「教室に入ったらおうちでこれあげるよ」と耳元で囁きました。教室の中でぐずるようなことがあったら、やはり先生には見られないところで人形の服の写真を出し、「おうちでこれあげるのに」と囁きました。

 

ABA

 

このお人形の洋服は6種類買っておいたのですが、4種類を消費したところで、お人形の服の写真がなくてもすんなり建物に入り、すんなり教室にも入れるようになりました。ようするに、4日実践して行動が改善したことになります。

 

療育センターの「別室作戦」は1ヶ月過ぎても効果がなかったのに、「お人形の服あげるよ」作戦は4日で効果があったのです。

 

この成功体験から、ひらがながある程度読めるようになると、「テーブルの上に乗らない」とか、「玄関に裸足で行かない」などの目標設定で試みたことがありますが、どれも成功しました。

 

トークンエコノミーが不成功に終わった経験から再び

 

しかし、K幼稚園の不登園のとき、「園バスに乗る」ということを目標にしたトークンエコノミーは全く成功せず、それ以降は長いことトークンエコノミーを試みることはありませんでした。

 

それが奥田先生の「メリットの法則」で、トークンエコノミーについて詳細に解説されているのを見て、再びやる気になったのです。

 

トークンエコノミーは、フラッシュバックなどの精神が不安定な状態では機能しないかもしれないけれど、今のさやの状態ならいけるかも、という親の勘で、年中の終わりの3月にトークンエコノミーをやってみることにしたのです。

 

幼稚園で「職員室に行かない」ということを目標にしたトークンエコノミーを実施するにあたって、療育センターと幼稚園の了解はとても得られそうにないと思ったので、再び「先生には内緒作戦」をとることにしました。

 

予想通りのトークン成功!

 

職員室は、体調が悪いときは誰でも行かれるので、例外として体調が悪いときを設けて、後は、1日職員室に行かなかったらシールを1枚貼れるようにし、シールが5枚たまったら、さやが欲しそうなかわいいデザインの万歩計をトークンとしてあげることにしました。

 

例外

 

トークンエコノミー用に作った上のような用紙を、幼稚園へ行く直前に見せます。

 

そして、帰宅したとき、職員室へ行ったかどうかを聞き、行かなかったらマルの中にシールを貼らせます。

 

職員室へ行ったのに、「行かない」と嘘をついている可能性もありますが、さやの場合は「決まりを守りたがる性格」(こだわり?)も手伝って正直なので、シールを貼れない日が何日か続くと、シールが貼れないジレンマで癇癪をおこすこともありました。

 

そうこうしているうちに、なんとか5枚のシールを貼ることができ、さやは万歩計をゲットしました。

 

連続して職員室に行かない日があったわけではなかったので、年長に進級してから別のご褒美を用意して再びトークンエコノミーを開始し、やがて不必要な職員室生活を断ち切ることができました。

 

過去の記事にも書いたように、さやはメロディオン(鍵盤ハーモニカ)をクラスで練習するときにも職員室へ行っていましたが、これはイヤーマフを使用することで回避できるようになりました。

 

行事など、いつもと違うことがある日は朝の少しの時間(10分程度)だけ職員室へ行っていますが、それ以外のときはほとんど行かずに、教室でみんなと同じように過ごしせるようになりました。

 

苦手そうな行事のときもご褒美(安めのもの)を用意し、行事が終わったら家で手渡しています。

 

ABAの成果?単なる子供の成長?

 

以上の試みによって、さやの幼稚園での姿は、見違えるほど安定したわけですが、この様子について、療育センターの先生も幼稚園の先生も、「成長によるもの」と言って譲らないことが残念です。

 

親は自分の子のために、必要な情報をたくさん集めて勉強しますが、先生にとってはしょせんは他人の子、どんなケースにも「別室作戦」を当てはめてワンパターンな対応を続けるだけなのです。

 

それでも、療育センターへ行ってよかったと思っているし、Y幼稚園に入園できてよかったと思っています。

 

療育センターでなければ身につかなかったこともあるし、Y幼稚園については、3月の下旬に加配つきの入園を許可して受け入れてくれる幼稚園なんて他にはない、という点で感謝しています。

 

幼稚園については、先生とのやり取りの仕方についてもいろいろ書きたいことがありますが、それはまた別の日に。

 

 

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 - ABA, 幼稚園