*

自閉症スペクトラム児のフラッシュバックにはEMDR 病院で受けられる?~

      2018/12/29

杉山登志郎

(この記事は、2018年8月22日に書いたものです。)

 

この記事では、自閉症スペクトラムの子のフラッシュバックについて書きたいと思います。

 

わが子の記憶

 

娘のさやは年少から幼稚園に入ったわけですが、年少のときの幼稚園は1年で退園しています。

 

入園した4月から10月下旬までは元気に楽しんで幼稚園に通えていたわけですが、その先は登園を渋り、朝だけでなく、1日中「幼稚園に行きたくない」という日々が続き、葛藤の末、冬休み明けの2月からは休ませフェイドアウトとなりました。

 

幼稚園に行きたがらない子というのはたくさんいるものですが、だいたい年度はじめの4月下旬から5月でおさまることが多く、また、登園時の朝だけ登園を渋り、登園してしばらくすると泣き止んでいたりする子が多いのではないでしょうか。

 

それがさやの場合、10月下旬までは順調に通えていたのに、幼稚園の行き渋りがはじまってからは、登園するとずっと泣いていて、帰りには泣いてこすった痕で目の周りがパンダのようになっていました。

 

帰宅すると次の日の幼稚園の登園のことで「行きたくない」と訴え続け、遊びもせず、食事のときやお風呂のときも、私にまとわり付いてひたすら訴え続けるのです。それこそ、土曜も日曜もずっと幼稚園のことが頭から離れず、「幼稚園に行きたくない」という訴えが続くのです。

 

毎日のように悪夢を見ていて、「夜寝るのが怖い」と言ってなかなか眠ろうとしませんでした。

 

「お友達にいじめられたに違いない」と言う人もいましたが、いじめなどはなく、ただ、「園庭を見たくない」とよく言っていましたが、後に園庭で使っていた道具を自分が壊してしまったことを思い出すから園庭を見たくなかったということがさやの口から語られました。

 

さやは「規則を守りたがる」タイプなので、幼稚園の所有物を自分が壊すということが許せなかったし、幼い自閉症児には恐怖だったのだと思います。

 

朝、園庭でたくさんの種類の体操をする幼稚園だったのですが、朝も帰りも園庭で過ごすことが多く、さやは園庭にいるのが相当嫌だったようです。

 

加配の制度のない幼稚園だったので、娘だけみんなが園庭にいるときに室内にいるということも許されず、園庭でただただ泣いて過ごすしかなかったのです。

 

私は「園庭を見たくない」というさやの心理にはフラッシュバックが関係しているような気がしました。

 

自閉症スペクトラムの人のフラッシュバックとは

 

自閉症スペクトラムの人によく起こるフラッシュバックは、ビデオ映像を見るように鮮明に過去の体験が再現されると言います。

 

さやは園庭を見るだけで、過去の嫌な記憶が蘇り、苦痛だったのかもしれません。

 

よく調べると、悪夢もフラッシュバックと同じに分類されるものらしいので、毎日悪夢を見続けていたことも、フラッシュバックのせいなのではないかと思ったのです。

 

私は自閉症児のフラッシュバックについて、その当時はどう対処してよいかもわからず、また、幼稚園側からも娘の不登園は「一人っ子で甘やかしているから」と、いい加減な理由であしらわれていたので退園以外の道はありませんでした。

 

その後さやは、療育センターと友好関係にあった幼稚園に年中から入園することになるのですが、もう同じことは繰り返したくないという思いが私にはあり、「フラッシュバックで苦しんでいるときはどうしたらいいか」という疑問が頭の中にずっとありました。

 

NHKのETV特集にヒントがあった!

 

疑問を抱えたまま月日が過ぎ、今年の3月にNHKのETV特集(「人とうまくつきあえない ~いじめや虐待と自閉症スペクトラム~」)を偶然見て、杉山登志郎先生という発達障害についての著作で有名な精神科医が自閉症の子のフラッシュバックをEMDRという器具で治療する様子を目にしたのです。

 

EMDRによって、過去のトラウマを、「思い出しても辛くない記憶」に変えることができるという画期的な治療法のことをもっと知りたいと思い、EMDRについて書かれている杉山先生の著作を買って読みました。

 

自閉症スペクトラム

EMDRの治療をしている杉山先生↑

 

フラッシュバックは未然に防ぐことのできない事故のようなものだし、自閉症児はいつそのような出来事に遭遇するかわかりません。

さやは幼稚園を変えることで、解決をしましたが、この先小学校、中学と、フラッシュバックが起こるたびに転校するわけにはいかないのです。

 

私はEMDRが自閉症児の救世主のように感じ、娘がこの先生きていく上で、またフラッシュバックが起こるのではないかという不安は解消されました。

 

幼稚園でこれだけ大変な思いをしているので、幼稚園選びや加配のことなどについて、また後の記事に書こうと思います。

 

 

発達障害のいま (講談社現代新書)
発達障害のいま (講談社現代新書)

 

関連記事(1):幼稚園転園の悲しみ(1) 加配手続きと園探し
関連記事(2):自閉症児の不登校・不登園の性質と原因を見極める ~幼稚園転園の悲しみ(2)
関連記事(3):「子ども虐待という第四の発達障害」を読んで。虐待は脳を萎縮させる。

 

 - テレビ・映画の感想